犬の前立腺がんについて

ドッグ

犬の前立腺がんについて書きます。

今年のはじめにエルモの前立腺がんが見つかり、春に手術を行い現在は元気に暮らしています。
前立腺がんが見つかった時、どのような治療を選択すべきか非常に悩みました。先生は選択肢を示してはくれますが、選択するのは飼い主です。
ネットで他の子がどのような治療を行っているか検索してみても、そもそもの症例が少ないこともあり、情報が得られず大変苦労しました。この記録が同じ境遇にある方の判断の参考になればと思います。

犬のがん治療は非常に高額ですので、ペット保険の加入をおすすめします。うちは未加入だったので全額自己負担となり手術前後は大変でした。

経緯は以下のとおりです。

  • 1月14日:血尿が出たため検査
  • 1月17日:超音波検査により前立腺肥大を確認
  • 2月3日:細胞診検査
  • 2月8日:細胞診の結果、移行上皮癌もしくは前立腺癌の疑い
  • 2月14日:まぶたのマイボーム腺腫切除手術
  • 2月20日:常時うなり続け、排尿・排便が困難
  • 2月24日:大量の血尿を確認
  • 2月26日:失明を確認
  • 2月27日:手足の麻痺を確認
  • 3月2日:手足の麻痺と視力の回復を確認
  • 3月9日:CTとMRIの検査
  • 3月23日:手術を決断
  • 3月30日:手術
  • 4月7日:退院
  • 4月28日:包皮縫合手術
  • 8月3日:尿管ステント術
  • その後:腹巻王子

1月14日:血尿が出たため検査

小さなものでしたがトイレシートに血液を確認したので、血便かと思い病院へ診察に行きました。ひとまず経過観察になりました。

1月17日:超音波検査により前立腺肥大を確認

出血が継続するため再診。先生から血便ではなく血尿ではないかと指摘され、尿検査と超音波検査を実施しました。検査の結果、尿からは細菌を、超音波検査では前立腺の肥大を確認しました。
炎症を抑えるために抗生物質を処方されましたが、同時に前立腺がんの可能性も指摘されました。

先生の話では犬の前立腺がんは非常に厄介で、診断後の予後は良くないそうです。選択肢として手術と薬による緩和治療を挙げられ、今後の治療のために、どちらにするか家族で考えてみてくださいと言われました。

手術は手術個所に神経が集中しているため難易度が高く大学病院での実施になるそうで、手術することによる命のリスクもあるそうです。薬による緩和治療は個体差はあるもののがんの進行を抑える効果があるそうです。緩和治療の別の選択肢として放射線治療も挙げられました。
奥さんに話していませんでしたが、この話を聞いてリスクの高い手術を避けて緩和治療を選ぼうと考えていました。

2月3日:細胞診検査

原因を特定するために細胞診検査を提案されたため実施。外部のアイデックスラボラトリーズで検査するため、結果が出るまでに1週間程度必要とのこと。

2月8日:細胞診検査の結果、移行上皮癌もしくは前立腺癌の疑い

検査の結果はがんとの診断。まずは転移巣の有無の検討と今後の治療方針を決定する必要があるとのこと。検査結果を受け取ったついでに奥さんに会社まで迎えに来てもらい車の中でこの結果を聞きました。

結果を聞いても治療方針の考えは変わらず、緩和治療にしようと改めて考えました。それなら1日も早く薬を飲んだほうが良いだろうと話しました。

2月14日:まぶたのマイボーム腺腫切除手術

前立腺癌の緩和治療を始めるにあたり問題が発生していました。エルモのまぶたにできものが出来ており診断の結果はマイボーム腺腫であろうと。手術による切除の必要があり、抜糸まで治療が始められないとのことでした。手術当日まで日に日に大きくなっていきましたが、手術自体は簡単なもので無事に終了しました。

この頃のエルモは紐状のものに執着し、留守番中に度々電源コードなどを食べてしまい心配しました。

2月20日:常時うなり続け、排尿・排便が困難に

手術後しばらくすると、エルモの様子に異変が起きました。エルモは普段吠えたりしないのですが、オシッコとウンチの出が悪くなっている様子で何度もトイレに行きます。痛みを伴うのか常時うなり続けていました。前立腺が肥大し器官を圧迫していたようです。

2月24日:大量の血尿を確認

この日の午後から血尿が酷くなりました。スーパーワイドのサイズのトイレシートが、一回の尿でほぼ一枚が真っ赤に染まるほどの血尿が出ることもありました。病院で痛み止めの注射と止血剤、消炎剤、抗生物質をもらいました。

2月26日:失明を確認

前日の夜の散歩中に舗道から道路へ踏み外したり、エリザベスカラーを舗道のポールにぶつけたりが多かったのでおかしいなと思い、家に帰ってから目に手を近づけても反応がありませんでした。
夜中にはうなりながら同じ方向へグルグル回りだし、脳へ転移しているのではないかと思いました。
朝ご飯を食べた後にオモチャを見せても反応がなく、近づけてもオモチャの存在に気付かないことから目が見えていないことを確信し、その日の午前中に病院に行きました。

診断結果は光に対する反射はあるが、視力は無くなっているとのことでした。原因は分かりませんでしたが、がんが背骨や脳へ転移した疑いがあるとのことで絶望的な気持ちになりました。神経へ刺激を与えるためにステロイドを処方されました。

手術後うなり声を上げていたのも、目が見えないことを僕らに訴えていたのかも知れないと思いました。

2月27日:手足の麻痺を確認

午後に自分の力で立てなくなり、手足を触ってみると足の反応が悪くなっているようでした。夜には手の反応も悪くなりました。翌日病院で診てもらうと手足が麻痺しているとのこと。やはりがんの転移が疑わしいとのことでした。

このまま寝たきりになることを覚悟しました。

3月2日:手足の麻痺と視力の回復を確認

1日2錠のステロイドを服用し続けた結果、手足の麻痺と視力が奇跡的に回復しました。先生も予想以上の回復だったようで驚いていました。いつも元気なエルモの回復力には感心します。

3月9日:CTとMRIの検査

麻痺と視力は回復したものの、今後の治療の相談と、転移の状況を把握しておくためにCTとMRIの検査を行うことになりました。大学病院での検査となるため主治医の先生の勧めで東大の動物医療センターで検査をしました。
検査結果は、前立腺は3cmほどに肥大しているが大き過ぎるほどではない。そして、転移は見当たらないことが確認できました。ただし細胞レベルでの転移はわからないとのことでした。
今後の治療について相談したところ、どの選択肢を選んでも寿命に大きな違いは見られないとの回答。

手術をする場合、前立腺だけでなく、膀胱、尿道、ペニスを一緒に摘出することになります。膀胱がなくなるので術後はオムツが欠かせません。腎臓から出ている尿管を包皮につなぎ排尿することになります。場合によっては尿管が短く包皮に届かないこともあるそうです。

あくまでも統計的な中央値の話ですが、犬の前立腺がんは、発見後3ヶ月程度で亡くなるそうです。それを聞いて手術する意味があるのか、一方で緩和治療を選んだ結果、転移が早いと苦しむかも知れないなど、どうするべきか本当に悩みました。
短い寿命なら、手術や術後の回復に時間を取られるぐらいなら緩和治療で今の生活を維持する方がエルモにとって良いのではないかと思っていました。

CTとMRIの検査費用は麻酔と合わせて約12万円ほどでした。

3月23日:手術を決断

CTとMRIの結果をもとに3月14日主治医の先生に治療方針について相談に行ったところ、転移がないのであればと、手術を後押しするような雰囲気を感じました。そこで改めて治療法のメリット・デメリット確認するために東大の診察を予約してもらいました。
僕たちが気にしていた寿命について再確認をすると、手術をすればしない場合と比べて1年程度の延命が期待できるのではないかと言われ、手術をすることを決断しました。

これまで緩和治療を選ぶつもりだったのが、一転して手術を選んだのは、少ない選択肢の中で寿命が延びる可能性と今後の障害が軽減される可能性が最も高いと判断したこと、そしてハッキリとは言わないまでも、長い間お世話になっているかかりつけの先生が手術を押している(であろう)ことが後押しになったと考えています。

3月30日:手術

朝にエルモを病院に預け、午前中は術前の検査。手術では前立腺だけでなく、膀胱、尿道、ペニスを一緒に摘出します。手術は午後7時30分に始まり、無事に終わったと電話連絡を受けたのが、翌日0時30分。5時間という長時間本当にがんばりました。

手術費用は検査、麻酔等合わせて約45万円ほどでした。

手術当日、検査待ちで少し不安そうなエルモ。

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エルモを預けた後、ロビン一人の散歩はどこか寂しそう。

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4月7日:退院

当日僕は都合がつかず、奥さんが迎えに行ってくれました。入院中にお見舞いに行った際も聞いていましたが、経過はとても順調とのことでした。
帰宅すると寝たまま尻尾をブンブン振って出迎えてくれました。

退院当日のエルモ。

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4月28日:包皮縫合手術

想像が難しいと思いますが、手術後はちゃんと排尿されることが重要なため包皮が開いた状態でした。これを閉じることで元々出ていた場所から排尿できるようになります。エルモの状態は良好でしたので包皮縫合手術を行いました。
費用は麻酔含め7万円ほどです。
※縫合箇所が常に濡れているためかくっつきが悪く漏れている箇所がありました。

8月3日:尿管ステント術

かかりつけの病院で尿検査をしたところ細菌が多く確認されたため、大学病院に連絡しCT検査を行いました。検査結果から尿管の一部が細くなっていることを確認したので、尿路確保のために尿管ステント術を行いました。
費用は麻酔含め8万円ほどです。この手術により漏れていた箇所もうまく縫合されました。

その後:腹巻王子

膀胱がなくなったので常時オムツを付けっ放しです。外に出る時はオムツを覆うために腹巻をしています。それ以外は以前の生活と何も変わりはありません。

前立腺がんの治療として、手術と緩和治療のどちらが正解かは今でも分かりません。個体差や進行度合いもあるので、一概に何が正解とも言えない気もしますし、選んだ道が正解とも言えます。これはがんが見つかった時に先生に言われたことでもあります。

手術後は3週間に1回ほど抗がん剤の治療を行いました。
残念ながら細胞レベルでの転移はあったようで、7月末のCT検査で肺への転移(2mmの腫瘍を確認)を確認しましたが、本人は至って元気です。
ひとまず抗がん剤の治療も一段落しましたので、経過観察をしつつ全力で腹巻王子をサポートしていきます。

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コメント

  1. rizureoroi より:

    突然のご訪問お許しください。
    初めまして!
    にほんブログ村のワイヤーフォックステリア新着ブログサイトから
    お邪魔させて頂きましたrizureoroiと申します。
    北海道でやんちゃなワイヤー2ぴきと毎日ドタバタ暮らしています。

    私は2013年2月に初代のわんこ シュナのリズを亡くしました。
    その後、ペットロスになりブログを休止していましたが、
    最近ようやく残った2ぴき毎日楽しく過ごせるようになりブログを再開し
    犬とキャンプというブログタイトルを目にしお邪魔させて頂きました。

    ロビンちゃん
    ご冥福をお祈り申し上げます。
    沢山悲しんでもいいと思います。だって家族が亡くなったんですから。

    エルモちゃんの闘病記録とても参考になります。
    うちの2ぴきも男の子ですので・・・

    初代のわんこが亡くなる前は、春から秋にかけて頻繁にキャンカーで
    お出かけしていましたが、亡くなってからキャンカーを手放してしまいました。
    すごく懐かしくキャンプの記事を読ませていただきました。

    いろいろ共通点があるようで
    勝手に親しみを感じています。
    またお邪魔させてください。

    ちなみに応援しているアルファアイコンのワイヤーモデルの大きいほうは
    うちのレオの兄弟です!

    • inucamp より:

      rizureoroiさん
      はじめまして。コメントありがとうございます。
      今頃リズちゃんとロビンは一緒に遊んでいるかもしれませんね。リズちゃんよろしくね。

      ロビンはリンパ腫で約2年闘病していました。注射や薬を嫌がらない良い子で、本当によく頑張ってくれたと思います。亡くなる前日に輸血をし、山だと言われたその日の晩を乗り越えてくれました。亡くなる当日は午前中仕事を休み病院に連れて行き、(山は乗り越えたという気の緩みからか)午後から出社してしまい、帰宅前に亡くなってしまいました。
      奥さんが看取ってくれましたが、1日そばにいてあげたら良かったと今でも悔やんでいます。

      このブログもロビンが亡くなったことを切っ掛けに、ロビエルとの記録を残すために始めました。以前の記事は思い出したり過去の奥さんのブログの転用だったりします。

      北海道でのキャンプやキャンピングカーはロビエル家の憧れなのでとても羨ましいです。いつかキャンプで北海道を回ることが出来たらと思います。

      レオくんはだいちゃんの兄弟なんですね!ロビエルは何度かまめだいママにお会いしていますよ。親近感湧きますね。
      今後ともよろしくお願いします。